ポインティリズム・シューズ
2024/05/03
店主の郷間です。
私の店はトラディショナルなアイテムが中心の洋品店ですが、過去のスタイル(型)に学ぶだけではなく、それを現代的にアレンジしたり、時にはそこからはみ出すこともファッションの醍醐味ではないかと思っています。
アウトドア用のワックスドコットンを使ったテーラードジャケットもその一つです。
格好良いかどうかを決めるのは「どんな風に」「どの程度」型を破るのか、ということだと思いますが、答えはそう簡単に見つかるものではありません。
現に、上で書いたワックスドコットンジャケットも3回作り直しました。
時には「この生地は工場では縫えないよ」などと言われてしまうこともあります。
そんなわけで、なにか楽しいことはできないものかと日々考えているわけですが、今日はその試行錯誤の一つ(仮にポインティリズム・シューズとでも呼んでおきます)を紹介します。
当店では従来から、靴を染料で染める(ハンドペイント)サービスを提供していました。染料は革に浸み込むことで色を付くので、ナチュラルな風合いにはなりますが、鮮やかな色を表現するのには向きません。染料ではなく顔料(簡単に言えばペンキのようなもの)を使えば鮮やかな色を出したり、極端に言えば絵を描くこともできますが、浸み込むのではなく革の表面に色を乗せる(塗膜を張る)ことになるので、塗膜が剥がれたりひび割れを起こしたりする可能性があります。
今回、剝がれにくい顔料に出会うことができ、何かできないかと考えた結果試作したのが、このポインティリズム・シューズです。日本語で言うなら点描靴(てんびょうぐつ)でしょうか。点だけで色を付けた革靴です。
本当は遠くから見て欲しいのですが、遠くから見る代わりに画像をぼかしています。
ぼかしてある状態だと黄色っぽく見えますが…
実は緑と赤で塗られています。
黄色っぽく見えるのは、2色が混じって見えるからです。
でも普通、顔料や絵の具などで緑と赤を混ぜると、茶色っぽい色になります(元の2色より濃い色になります)。
ではなぜ、この靴は実際の顔料の色より明るい色に見えるのでしょうか。
それは、「加法混色」という現象が起こるからです。
顔料や絵の具を混ぜることで起こる混色を減法混色と呼ぶのに対し、光の色が混じることで起こる混色を加法混色と言います。
この靴は、顔料を混ぜたわけではなく、細かい2色の色(光)を並べることで起こる加法混色によって、黄色っぽく見えているのです。
モネやスーラなど、印象主義や新印象主義と呼ばれる絵画といえば、水色や黄色といった明るい色を思い浮かべる人も多いのではないかと思いますが、それはこの加法混色を利用しているからなのです。
ちなみにテレビの画面も加法混色で色を作っています。
なんだか靴とは関係ない話をダラダラとしているような気がしないでもないですが(^^;)、せっかく革靴に顔料で色を付けるのなら、私の好きな色彩や美術の理論も利用してみよう、という実験です。
そんなわけで出来上がったポインティリズム・シューズですが、最も懸念しているのは、やはり塗膜の剥がれやひび割れです。革と相性の良い顔料とはいえ、いつかは必ず劣化します。問題はどのくらい持つのか。そして補修は可能なのか。
それ以前に、こんな派手な靴が欲しい人はいるのかという問題もありますが、顔料は1色で使うことも出来ますので、この靴はほんの一例だとお考え下さい。
まずは顔料の耐久性に注目しながら自分で履いてテストしてみます。
というわけで、顔料で革靴を塗ってみたという話でした。
今のところサービス化する予定はありません(^^;)
オーダーシューズ 58,300円(税込)~
当店は山形県南陽市の宮城興業ふるさと納税お仕立券に対応しています。
フィボナッチ紳士洋品店
東京都墨田区墨田5-4-7
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